chugaiトピックス
実践からわかった、失敗しないグローバルマーケティングリサーチの3つのポイントとは?

2015年の後半(下期)あたりから海外、特に欧米、中国・東南アジアに関するマーケティングリサーチのご相談をいただく機会が、とても増えてきました。
クライアント企業様ごとで目的や課題の違いはありますが、ご相談の趣旨を伺ってみるとそのほとんどが、「2020年の目標達成に向け、裏付けになるデータが欲しい」ということでした。
では「なぜ2020年?」なのか、クライアント様や主要企業のHPの隅々まで見たところ、その答えが中期経営計画の中にありました。つまり、各企業が立てた中期経営計画に記載されている売上目標やありたい姿(「ワールドワイドで業界のTop3になる」など)になるゴールが2020年だったのです。そして、その目標達成のキー要素のひとつが「海外市場における売上額の向上」ということでした。

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IR情報を見比べると、同じ製造業であっても作っている製品や市場を取り巻く環境によって、ある程度の差はありますが大体60%〜90%の売上構成が海外でという日本企業が大半を占めています。中には93%強が海外という上場の電子部品メーカーもあります。
様々な要因、課題により日本国内で売上を大幅に向上させることはなかなか難しくなっていることは周知の事実です。そのため土地勘のない(少ない)海外で、もっと、もっと売上を上げなければならなくなってしまった、日本企業が多く存在しています。
そこで重要になってくるのが、既にその市場で営業展を行っている欧米系企業や現地の有力企業を相手に、どう戦ったら良いか?つまり「けんかのやり方」を見つけるためのマーケティング戦略を立てることです。しかし、ここで多くの企業様は「広告だ、イベントだ!」にすぐ走ってしまうのですが、アウェー感満載の現地でのけんかです。こんな状況だからこそ、ここは少し立ち止まってマーケティングの定石中の定石「R-STP-MM」のことを少し思い出してください。最初にやらなければならないことは・・・そうです「R」のリサーチです!
少し話しが外れますが、グローバルリサーチのご提案をさせていただくと、こんな意見を伺うことがあります。
「リサーチ?海外でアンケートなんて、みんな適当に答えるから、ダメダメ・・・」
たぶんこういうお客様は、過去に調子の良い広告代理店かリサーチ会社の話に乗ってしまって、適当なパネルと中途半端な設問でアンケート調査をやられ法外な費用を請求された上に、その結果で上司からこっぴどく叱られた経験があるのではないでしょうか?
私の経験から、マーケティングリサーチは「他人任せ」にした時点で、失敗したも同然です。では失敗しない、「本当に使えるリサーチ結果」を得るためには、どうしたら良いのでしょうか。
私はまず「今回やりたいマーケティングは何か?」をクライアント様と一緒にしっかりと定義して、ご理解いただくことからスタートしています。「たかがリサーチ、されどリサーチ」です。その上で、そのマーケティングに必要なリサーチの目的や方法、アウトプットイメージ(分析手法)、最後の報告会までをイメージして、クライアント様とそれぞれの場面を共有します。ここで重要なことは、この「やりたい」を貫くために各工程では常に振り返りを行い、それぞれのアクションに漏れやブレがないかを常に関係者間でチェックすることです。
具体例として、マーケティングリサーチの中心となる「設問設計」について、たたき台となる設問案の制作やアドバイスは弊社側で行いますが、全体の70%はクライアント様の意見や意思が中心となるようにプロジェクトを進行しています。設問設計をお客様に「自分ごと化」していただくことで、実査後のデータ精度や品質が格段に向上するだけでなく、データへの愛着が生まれることで分析軸の設定やこの後のSTP(Segmentation - Targeting – Positioning)設計のための仮説出しが円滑になるからです。そして、その結果として最終的なプロモーション施策の成功率までもが高まってくるのです。
最後に、弊社の経験から設問設計についてお客様にいつも申し上げている、グローバルマーケティングリサーチを成功に導く3つのポイントは以下のような内容です。国内のリサーチでも応用できますので、是非ご参考になさってください。

●回答者が回答しやすい流れ、リズムになっているか?
・マトリックスタイプの回答形式の設問は、表側(たて)が7項目、表頭(よこ)は10項目くらいが理想です。
・ついつい、たくさん聞きたくなりますが本調査の設問数は最大で15〜20問程度になるように調整してください。
・選択肢型設問とフリーアンサー(FA)の理想バランスは、9:1。 ※調査する国によってこの比率は多少違ってきます。
⇒ FA回答に積極的な米国、中国と、超消極的な日本であることをお忘れなく。

●設問で使用する言葉をどう選ぶか?
・広く、浅く、正確な回答を求めたい場合は一般的で、簡単な言葉を使って設問作りを行ってください。
・深く突っ込んだ回答が欲しいときは、専門用語を設問や選択項目に使用することで、期待した回答が得やすくなります。
⇒ 特に設問の翻訳には要注意です。「訳した言葉自体は間違っていないが、ニュアンスが違う」と言うケースが多く向けられます。必ず複数の現地スタッフなどに確認してもらってください。英語、中国語であれば弊社のスタッフで対応可能です。

●リサーチを実施したい国は、どんなリサーチが可能なのか?
・ICTや郵便網といったインフラ整備の状況とリサーチ環境は、イコールの関係ではありません。
・東南アジア、欧州のリサーチ環境(特にネット)は想定以上に厳しい状況です(経験からの弊社見解)。
⇒スクリーニングや割付などを検討される場合は、前段階での十分な情報収集、リサーチ会社によっては出現率調査を実施されることを推奨します。
いかがでしょうか。貴社のリサーチプロジェクトの一助となれば幸いです。
最後に今回のまとめです。まずは改題解決に向けて「やりたい、マーケティング」の骨格が決まったら、それをリサーチプラン⇒設問設計に、細部にわたって落とし込んでください。
3つのポイントでも述べさせていただきましたが、回答のリズムが崩れたり、設問が難しい・理解ができなくて考え込んでしまったら、その後の回答は残念ながら本心ではなく、適当に答えた「使えないデータ」になります。いい加減な回答をヒントに正しい戦略を策定するなど、とても怖くてできません。
マーケティングリサーチはここ数年でシステムがとても進化し、精度の高いリサーチがより簡単に、手軽にできるようになりました。しかし、どれだけ手軽になっても設問作りだけは手軽にはなりません。常に回答者の気持ちになって、丁寧に設問を作っていただくことをお勧めします。
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