
2012年1月5日~11日 インド・デリーにおいて(Auto Expo 2012)が開催されました。 近い将来中国を抜き人口が世界一となるインド。国民の平均年齢も25歳と若く、中国の41歳、日本の44歳と比べて市場として圧倒的な魅力、 将来性を感じさせる国ですが、その反面様々な課題も抱えたインド。今回のモーターショーでは改めてその魅力と課題を実感してまいりました。
何かにつけ中国と比較されるインド。展示会においても比較するのであれば、残念ながら全てにおいて今の中国の15年から20年は遅れている状況が今のインドだと言えます。
具体的には主催者の運営、会場のインフラ、装飾業者のレベル、どれをとっても日本人にとっては及第点にも満たないでしょう。
一番の問題は主催者の運営です。今回もショーの開催1ヶ月前になっても出展の場所も面積も装飾規定も、何度問い合わせても「決まっていない」との返事。
しかし各種申請期日は厳守。これでは初めて出展する日本企業の場合は身動きがとれず、計画が立てられない、進められない事態になってしまいます。
これは現在のインドの展示会が完全に売り手市場となっていることも原因でしょう。彼らは出展者に困らないため、サービスが向上することがありません。
会場のインフラはデリーが特に問題です。南部のバンガロールなど地方の新しい都市ではある程度新しいホールがありますが、 デリーの場合は昔のままで改修工事もしていないため閉鎖されたホールがたくさんあり、会場内のレストランも全てクローズとなっています。 食事は屋外の露店で買うほかありません。また、停電も頻発するので自衛手段を講じる必要があります。
装飾のレベルも全体的に最低水準です。デザインや仕上がりのレベルを日本、欧州、中国と比較しても意味がありません。
高いレベルの仕上がりを期待するのであれば、インドではなくシンガポールやドバイの業者を入れる必要があるでしょう。
サインやグラフィックスの大型主力のレベルも悪く、現地で出力するのであれば色や解像度については目をつむるしかありません。
今回も欧米の大手企業は、全ての資材を現地に持ち込みインドの業者を使わずに施工していましたが、非常にコストが高くなるため一般企業では現実的ではありません。
また契約時に会期前のブース引渡しを条件にしないと、初日を迎えてもブースが出来上がらないといった、あってはならないことが普通に現実となりますので注意が必要です。
ここまでは悲惨としか言いようのないことばかりでしたが、インドの展示会での魅力はなんと言っても来場者です。
前回2010年のデリーモーターショーは120万人の来場者でしたが、今年は正式発表されてはいませんが、140万人を突破しただろうといわれております。
しかも、来場者の年齢層が国の平均年齢と同じく非常に若いのが特徴です。
また、非常に熱心に質問したり写真を取ったりする姿も多く見られ、「活気」という面では中国を凌ぐ雰囲気が会場中に溢れています。
特に今回のモーターショーでも他国では定番のエコカーの訴求やPRはほとんど目立つことはありませんでした。
SUV、高級車といった車よりも圧倒的に新型の小型車の注目度が高く、これから自動車を買う世代、階層の人々が「ギラギラした目」で会場中を埋め尽くしているのには圧倒されました。
部品メーカー様のブースでも他国ではない特徴がありました。通常モーターショーではプレスデーや特別招待日など、
一般来場者が入る日を避けて自動車メーカーの技術者が部品メーカーを訪れる傾向が強く、
部品メーカー様もそれに対応して説明員を重点的に配置しますが、インドでは一般日に多くの技術者が訪れることが分りました。
これは日本からの説明員の出張期間にも影響するので十分検討する必要があります。
また、少し違った目線で会場を見ると、「日本」という国のPRが会場で全く無いことに寂しさと危機感を感じました。
日本と常に競合となるドイツ、中国、韓国はそれぞれ自国専用のホールを持ち、国もしくは関係機関が主導となって来場者に訴求していましたが、
日本は企業が個別に出展しているだけでまとまりもなく、非常に影が薄く、スズキ、トヨタ、ホンダなど日系大手メーカー頼みといった感がしました。
これではインドでの市場競争で貪欲に攻める韓国や中国に追いつくどころか、逆に引き離されていく一方になるのではないかと不安を感じました。
今回はたった2週間の訪問でしたが、期間中会場を離れ、現地の新聞、雑誌、屋外広告メディアの編集や広告担当者、さらにジェトロにも訪問いたしました。
中外としていくつかのメディアとは、広告代理店になる契約も進めることができましたのでインドの情報は今後確実にお客様にご案内できることになります。
ただ、展示会というプロモーション一つをとっても、インドという国が一筋縄ではいかないということも痛切に感じました。これはメディアでも同じで、慎重に、確実に対応していかざるを得ないでしょう。
急激な環境の変化がない限りインドはゆっくりとしか変わらない可能性が高く、我々としてもそれを前提として日本からインドへ進出されるお客様の不安を少しでも解消できる体制作りを進めたいと考えます。
レポート:鎌田暁雄