5分でわかるトレンドワード RAG
要約
● 生成AIへの不満とRAGの登場● RAGとそのメリットは?
● 導入は容易、個人用RAGも可能
● 文脈や言葉の意図を読むRAGも登場
● まとめ
生成AIへの不満とRAGの登場
近年さまざまな生成AIがアイデア出し、文章作成、プログラミング支援などに活用の範囲が広がり、日々の業務を大きく変革しています。一方で、多くの企業が本格的にAIの実務活用を進めようとする中で、従来から2つの課題がありました。1つ目が社内データや最新情報が反映されないこと、そして2つ目がハルシネーション、つまり事実ではない内容を本当のことのように回答してしまう問題です。これには理由があり、生成AIは大量の公開データを学習して作られていて一般論や一般知識に対しては高度な回答が可能ですが、ローカルな情報、例えば自社の最新営業マニュアルや非公開の最新経営予測といった未公開データには対応できません。これではより正確性が求められるビジネスの現場で安心して仕事を任せることはできません。そこで生成AIを「自社業務を熟知した優秀なパートナー」へと進化させるために登場してきたのが「RAG」です。
RAGとそのメリットは?
RAGは「Retrieval Augmented Generation」の略語で、日本語では検索拡張生成といいます。「ラグ」と読むのが一般的です。検索拡張生成は、関連する最新の社内資料が網羅された図書室で、必要なページを参照しながら回答していくような仕組みです。ユーザーから質問や依頼が寄せられると、RAGが関連文書をデータベースから検索してAIに渡し、AIはその資料を根拠に回答を生成します。これによりハルシネーションを抑制でき、その結論に至った根拠も検証しやすくなります。結果として医療や法務といった説明責任や正確性が厳しく求められる分野でもAIを安心して活用しやすくなります。
同じように自社の情報をAIに読み込ませて正確性を向上する方法として、「ファインチューニング」という方法もあります。これはAIモデルを追加学習させて特定の業務や表現に適応させる手法ですが、新しい情報を反映するたびに学習の手間やコストがかかりやすい点が課題です。一方、RAGは基本的に参照する資料を更新するだけなので最新情報への対応が楽というメリットがあります。
導入は容易、個人用RAGも可能
企業がRAGを導入するメリットはたくさんありますが、同時に、社内の機密情報などを読み込むことからいくつかの不安要素があります。例えば社外への機密漏洩リスクとしては、RAGが参照した社内データが一般のAIの学習に使われると他のユーザーへの回答として流出するおそれがあります。また社内情報であっても極秘情報や個人情報といったアクセスに権限が必要な機密性の高い情報がありますが、すべての従業員の要求に対して回答してしまうという危険もあります。また自社専用のプライベートAIに対する高コストも懸念材料の1つです。
現在、企業で採用されているRAGはこうしたリスクをあらかじめ抑制した法人向けクラウドサービスのAI上で利用されており、入力した社内データをAIの学習に利用しないことが規約で定められています。暗号化された安全な環境下でAIを活用できます。
さらにRAGの仕組みは個人でも近年は導入可能になっています。一定使用無料の「Gemini Notebook(旧Google NotebookLM)」や月額制の「ChatGPT(GPTs)」「Notion AI」を使うことにより手元にあるドキュメント(音声、画像、動画、Webなど)を読み込ませて自分専用のRAG環境を短時間・低コストで構築可能になっています。
文脈や言葉の意図を読むRAGも登場
RAG技術も急速に進化を遂げており、用途に応じた新しい技術が登場しています。
従来型RAGは「経費精算の手続きは?」「この商品の仕様は?」といった、単一の資料から明確な答えを探す業務に適しています。その反面、多くの資料を横断し内容の把握も必要となるざっくりした質問への回答は不得意です。
そこで登場してきたのが次世代のRAG「Graph RAG(グラフラグ)」です。情報を単語だけでなく「キーワード同士の関係性(ナレッジグラフ)」として整理・保存し、記憶のつながりから探していく手法です。例えば「この資料の主要なテーマは何か?」「過去の事案との共通点はあるか?」といった、複数の要素や資料をまたぐ複雑な文脈分析・調査業務で真価を発揮します。こうした技術により、ユーザーの意図や文脈を反映した正しい回答が得られることになります。
RAGの登場により自社ナレッジを自由に扱うエージェントへと進化しました。社内マニュアルや過去ログを参照して正しく回答できるヘルプデスクやコールセンター業務の効率化をはじめ、専門知識・専門業務のリサーチや業務支援などさまざまなユースケースが存在します。
まとめ
生成AI関連技術は今日の業務効率化に欠かせませんが、それを「仕事を任せられるAI」「根拠を説明できるAI」など、さらにもう1歩進めるのがRAGです。RAGは自社専用の巨大なAIを作る必要はありません。安全性の確保されたクラウドAIと社内データを組み合わせる仕組みです。個人でもGoogleのGemini Notebookなどを使えば無料でRAGの便利さを体験できます。