5分でわかるトレンドワード 20XX年問題
要約
●「20XX年問題」が生まれる背景●2026年問題
●2027年問題
●2029年問題
●2030年問題
「20XX年問題」が生まれる背景
「2024年問題」「2025年の崖」など、特定の年に発生する課題が話題にのぼることがあります。これらは一般的には「年問題」と呼ばれるもので、人口の変動の予測、法律の施行、制度変更、機器やシステムのサポート終了の日程などが関連しています。例えば日本の出生数や年齢構成の推移は数十年先まで高い精度で予測できるため、人手不足や社会構造の変化は事前に数値として判明します。法改正、ITシステムのサポート終了、国際的な規格の変更などには猶予期間や目標年が設定されるため、将来起きる「20XX年問題」があらかじめ分かるわけです。「20XX年問題」という呼び方が使われるのは世界やビジネスに深刻な影響を与える問題であることが多く、20XX年という期限が明確に分かるため締め切りに合わせて対応を予定しやすい、というメリットもあるためです。
それでは、2026年から2030年にかけて、どんな問題が想定され、どのような対応が進んでいるのか簡単に紹介していきましょう。
2026年問題
2026年は「物流の2026年問題」があり、今まさに対応が進んでいるところです。物流業界は2024年4月に適用されたトラックドライバーの時間外労働上限規制(物流の2024年問題)に続き、2026年には「改正物流効率化法」が全面施行されました。これにより、荷主や物流事業者に「物流統括管理者(CLO)の選任」や「中長期計画の提出」などが義務化され、物流効率化のための管理体制や経営責任が問われるようになりました。
※出典:経済産業省 「物流効率化法について」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/distribution/butsuryu-kouritsuka.html
「AIの2026年問題」という問題もあります。これはLLM(大規模言語モデル)が学習に使用する信頼性のある高品質なデータが2026年頃に枯渇してしまうという2023年の予測に基づいたものです。高品質なデータを確保するために新聞、出版、テレビなど既存のメディア企業との提携が進むなど、AIの進化の原動力である学習データを安定的に確保するための取り組みも進んでいます。
2027年問題
2027年には、ビジネスと家電の領域で大きな変化が生まれます。
1つ目が「SAPの2027年問題」です。多くの企業が導入している基幹システム「SAP ERP 6.0」の標準保守が2027年末で終了します。企業は後継製品であるSAP S/4HANAへの移行、延長保守サービスでの継続運用、あるいは別システムへの乗り換えを検討する必要があります。移行には大規模な投資と長期のプロジェクトが必要になることから、多くの企業が頭を悩ませています。
2つ目が「エアコンの2027年問題」です。国の設ける省エネ基準の改定により、業務用・家庭用エアコンに対する省エネ目標基準が2027年4月から引き上げられる予定です。基準を満たさない旧式や格安のモデルが製造・販売できなくなり、比較的高価な省エネモデルが主流となるため、エアコンの最低購入価格が上昇することが懸念されています。酷暑が続く日本の夏にとっては頭の痛い問題です。
※出典:資源エネルギー庁 「27年4月からエアコンの新たな省エネ基準がスタート!エアコンについて知っておくべきポイントは?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/air_conditioner_2026.html
3つ目が「蛍光灯の2027年問題」です。一般照明用蛍光灯の製造および輸出入が2027年末までに全面禁止されます。交換用ランプの入手が困難になるためLED照明への移行が欠かせません。LED照明が増えているとはいえ蛍光灯を使い続けている設備や家庭はまだ多く、影響はかなり大きくなりそうです。
2029年問題
2029年には「TLSサーバー証明書有効期間短縮問題」があります。TLSサーバーは主に「HTTPS」といったWebサイトの暗号化通信に用いられ、盗聴や改ざんを防ぐ役割を担います。「SSL/TLSサーバー証明書」を利用して本物のサーバーであることを証明しますが、この証明書の有効期間が約1年だったのがセキュリティの維持を目的として段階的に短縮化されており、最終的には2029年3月までに「最長47日」に短縮されます。従来のように手動更新に頼った運用のままではうっかり更新漏れを起こしてしまい、警告画面の表示、閲覧不能、接続エラーなどの障害を招くおそれがあります。
2029年3月に予定されている「NTTアナログ専用線サービス終了」も歴史と影響の大きさから2029年問題の1つとされています。NTT東日本・西日本では、アナログ専用線サービスを2029年3月31日に終了する予定が発表されています。「アナログ専用線」とは特定の2つの拠点間で通信・通話するための自社専用のアナログ回線のことです。アナログ専用線は非常に古くから使われ、長期間運用され続けている上下水道・河川監視などのテレメータ(遠隔測定)、公共インフラ(道路、橋梁、トンネルなど)の遠隔制御、設備監視や工場制御ネットワークなどではいまだ現役として使われています。光回線、VPN、LTE/5G、クラウド化などへの移行を目指して、全国の自治体で取り組みがまさに進んでいるところです。
2030年問題
2030年には多くの分野で深刻な社会問題が発生することが高い確度で予測されています。
2030年問題の最も大きなものは、「少子高齢化、超高齢社会の本格到来」です。国内人口の3人に1人が65歳以上の高齢者になり、生産活動の中核を担う生産年齢人口(15〜64歳)は減少します。医療、介護、年金といった社会保障制度の見直しが行われていく一方で、IT、物流、医療介護、建設、製造などの多くの業界で需要は拡大するのにも関わらず深刻な労働力不足に陥ることが危惧されています。そのため国家レベルでAIを活用したDX 推進による生産性向上、シニア、外国人など多様な人材の登用などの取り組みが進んでいます。
「カーボンニュートラル2030年問題」もあります。日本は2050年カーボンニュートラル実現に向けて、まずは2030年度に温室効果ガス46%削減(2013年度比)を大きな目標に掲げています。再生可能エネルギーの導入、脱炭素化、電化推進といった取り組みを国・企業・地域社会全体で進めており、結果が待たれるところです。
また自動車関係では、EVやゼロエミッション系への移行、ガソリン車の規制が2030年以降から各国で始まる予定でしたが、政治情勢などの影響を受けて、現時点では数値目標の撤廃や規制緩和や延期が相次いでいます。
まとめ
2026年から2030年までの代表的な年問題を紹介しました。これらはほんの一部で、さまざまな業界や分野には特有の「20XX年問題」が存在します。これから先も毎年のように新たな「20XX年問題」が注目されるでしょう。その背景にどのような変化があるのかにも注目してみると、より理解が深まるかもしれません。