5分でわかるトレンドワード ガバメントAI

要約
●AIの普及と行政への波及●ガバメントAI が推進する行政DX
●ガバメントAIの概要
●まとめ
AIの普及と行政への波及
生成AIの進化と普及を背景に、生活や仕事の内容が急速に変化しています。企業では業務効率化や顧客対応などにAIが積極的に活用され、教育や医療の現場でもAI活用が進んでいます。こうしたなか、政府や地方自治体もAIの活用に本格的に乗り出そうとしています。
2025年6月13日、政府は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」のなかで、さまざまな行政機関が横断的に利用できるAI基盤「ガバメントAI(仮称)」の開発を進めることを発表しました。
行政のAI導入に関しては、従来は各省庁や自治体が個別にAIを導入していましたが、開発コストがかさみ、ノウハウの共有も難しいという課題がありました。この共通基盤では、行政事務の効率化や利用者向けチャットボットなど、共通性が高く需要のあるアプリケーションを開発・提供する方針です。2025年度中に一部システムを実用化し、2026年度から中央官庁や地方自治体への提供が始まる予定です。

出典:デジタル庁 デジタル社会の実現に向けた重点計画
https://www.digital.go.jp/policies/priority-policy-program
ガバメントAI が推進する行政DX
ガバメントAIは行政側、利用者側双方にメリットがあるとされています。
行政側、つまり政府・自治体側のメリットとして、業務効率化やノウハウ共有が挙げられます。AIが定型業務を支援することにより職員の負担が軽減されます。また共通基盤とすることで開発の無駄を省き、全国の自治体が知見を共有しやすくなることが期待されています。
また行政サービスの利用側である国民・住民側のメリットとしては、手続きの簡素化、24時間対応、公平なサービス提供が期待されます。AIが申請書類の下書きを自動生成したり、制度の説明をわかりやすく案内したりすることで、利便性向上、サービスの質向上、さらには共通化することで地域格差の是正にもつながります。また今後ニーズの増加が見込まれる外国人住民への多言語対応も、より容易になります。
ガバメントAIの概要
プロジェクトを主導するデジタル庁では、2025年5月よりAIの検証環境を構築して作業を進めており、AI活用ができる作業を実証中です。発表資料によると、2025年7月から開発に着手し、完成したアプリケーションは、2026年度から利用環境を中央官庁や地方自治体に広げていくとのことです。AIの基礎となるLLM (大規模言語モデル)に関しては、米OpenAIの「ChatGPT」や米Anthropicの「Claude」など、複数の海外製LLMを活用しており、今後は国産LLMの開発動向も見つつ、検討していく方針となっています。
秘匿性や機密性の高い行政情報をAIで扱ううえでセキュリティ対策も大きな課題となってきますが、2025年5月にデジタル庁が定めた「生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」により、行政情報のうち非公開の行政情報や個人情報などを含む「機密性2」までのデータをAIに学習させることが可能となりました。これにより行政専門の生成AIシステムの開発も可能となり、情報漏洩リスクの評価と対策を事前に行い、安全な運用が図られるよう配慮されています。

※出典: 2025年デジタル庁活動報告 資料より
https://www.digital.go.jp/policies/report-2025
まとめ
ガバメントAIは、政府・内閣・地方自治体が共通して利用する「横断的なAI基盤」を目指しています。行政のDXに加え、医療・福祉・教育・防災などさまざまな分野への波及効果も期待されていることから、安心・安全・公平な行政サービスの実現にも期待が寄せられています。今後、ガバメントAIがどのように私たちの暮らしに影響を与えるのか。行政とAIの関係は、今後ますます注目されるテーマとなるでしょう。