TopNEWS & MEDIA5分でわかるトレンドワード ペロブスカイト太陽電池

5分でわかるトレンドワード ペロブスカイト太陽電池

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要約

●太陽電池の普及と課題
●ペロブスカイト太陽電池とは?
●ペロブスカイト太陽電池で変わる発電ライフ
●進む実証実験・導入事例
●今後の展望

太陽電池の普及と課題

再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電は、日本国内で住宅や工場、公共施設などに広く導入され、2024年時点で国内でも約80GWの規模に達しています。
その一方で現状の太陽光発電は、FIT(固定価格買取制度)の見直しや、メガソーラ開発による自然環境への影響など、多くの課題が浮き彫りになっています。現在主流の「シリコン太陽電池」はパネルが重く、設置場所に制限があることも限界のひとつになっています。山地が多い日本の国土では、すでに平地面積当たりの太陽光発電の導入量が世界1位となっており、新しい設置場所の確保が課題となっています。
こうした課題を克服する次世代技術として、今注目されているのが、日本発の技術である「ペロブスカイト太陽電池」です。

出典: 資源エネルギー庁 「日本の再エネ拡大の切り札、ペロブスカイト太陽電池とは?」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/perovskite_solar_cell_01.html

ペロブスカイト太陽電池とは?

ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト構造」と呼ばれる結晶構造を持つ材料を使った新しいタイプの太陽電池です。
フィルム状の基材(プラスチックなど)に塗布・印刷して製造することが可能です。
ペロブスカイト太陽電池とシリコン太陽電池を比較すると、以下の点が優れているとされています。

●軽量:太陽電池というと重くて大きなパネルを想像すると思いますが、あれはシリコン太陽電池が基材や構造部にガラスや金属を使っているためです。ペロブスカイト太陽電池は薄いフィルム構造なので非常に軽量です。

●柔軟:素材や基材自体が柔らかいため、曲げても性能が維持される設計が可能です。曲面などにも自由に設置できます。

●低温・低コスト: シリコン系が高温処理を必要とするのに対し、ペロブスカイトは約100℃で製造でき、塗布や印刷技術でフィルム状に加工できます。そのため低コスト・低エネルギーで大量生産が可能になるとされています。

●エネルギー変換効率の高さ: 単体で26.1%、シリコンとの積層型では34.6%が達成されており、将来的には40%超も視野に入っています。また主原料となるヨウ素は日本の生産量が世界で2-3割を占めているため、安定したサプライチェーンが期待できます。

ペロブスカイト太陽電池で変わる発電ライフ

ペロブスカイト太陽電池の軽さと柔軟性は、従来の太陽電池では難しかった場所への設置を可能にします。
例えば、古い建物のように、耐荷重の問題でこれまで太陽光パネルが設置できなかった場所にも設置できますし、ビルの外壁や窓ガラスに採用することで、建材一体型の発電が可能になり、ビルおよび企業のカーボンニュートラル化および都市部の発電能力を向上させることができます。また、透明化技術により、窓ガラスとしても機能する「発電する建材」の開発も進んでいます。
電気自動車の車体など移動物に設置することで走行中に充電できる可能性もあり、自動車、電気自転車、電車、あるいは歩行者などモビリティ分野への応用が期待されています。農業施設、サイロ、倉庫といった曲面や特殊形状にも設置できるため、再生可能エネルギーの導入範囲が広がります。

進む実証実験・導入事例

経済産業省では2040年を目標に、ペロブスカイト太陽電池により20GWの発電量を上増しすることを発表しています。

出展:経済産業省 第9回 次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/perovskite_solar_cell/009.html

民間でも2025年に入り、ペロブスカイト太陽電池の実証実験が急速に進んでいます。
たとえば大阪・関西万博でもペロブスカイト太陽電池は活躍しており、バスターミナルには世界最大級のペロブスカイト太陽電池が設置されているほか、多くのパビリオンや設備で活躍しています。変わったところでは、スタッフユニフォームにフィルム型ペロブスカイト太陽電池を貼り付け、発電した電力でユニフォームに備え付けられたファンを回したり、スマホを充電したりしているそうです。

※出典:経済産業省 METI Journal ONLINE
https://journal.meti.go.jp/p/38864/

また東京都では脱炭素アクションの一貫として、ペロブスカイト太陽電池の民間導入を100%補助し、普及を後押しすることを決定しています。
それに伴い次世代型太陽電池のネーミング総選挙を行って老若男女に身近に感じて普及を推進していくなど、多様な動きを進めています。

※出典:東京都庁 「次世代型太陽電池」ネーミング総選挙が7月4日より開始 日本生まれの太陽電池の名前を投票
https://www.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/07/2025070413

さまざまな企業がペロブスカイト太陽電池に挑戦していて、日本全国各地で、実証実験や公共施設への設置が進行中です。

今後の展望

ペロブスカイト太陽電池は多くの可能性を秘めていますが、同時にいくつかの克服すべき課題も残されています。例えば紫外線や湿気に弱いため、耐久性の面で20年相当の耐久性を目指した技術開発が進行中です。また塗布・印刷による製造は均一性や品質管理の面でいまだ課題があり、量産技術のさらなる高度化が求められています。一方で従来のシリコン太陽光発電パネルでも、軽量化やフレキシブル化の取り組みが進んでおり、マーケットにおける主導権争いは激しくなっていきそうです。
さらにペロブスカイトとシリコンを複合することで、より高い発電効率と低価格化を進めるタンデム太陽電池の開発も進んでいます。
政府の支援や企業の積極的な投資により、ペロブスカイト太陽電池は、脱炭素社会の実現に向けた切り札として、今後ますます注目されるでしょう。

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